高額療養費制度とは?親が入院したときに知っておくべきお金の話

「親が突然入院して、医療費がいくらかかるのか不安…」そんな経験をしたことがある方、あるいはこれから心配している方に、ぜひ知っておいてほしい制度があります。それが高額療養費制度です。

この制度を知っているだけで、親が入院したときの「お金の不安」がかなり和らぎます。事前に理解しておくことで、いざという場面でも冷静に動けます。

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高額療養費制度とは?

高額療養費制度とは、1か月の医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合、超えた分を国が払い戻してくれる制度です。日本の健康保険制度に組み込まれており、すべての健康保険加入者が対象です。

たとえば100万円の手術を受けた場合、3割負担なら窓口での支払いは30万円になりますが、高額療養費制度を使うと収入に応じて実質の自己負担は数万円〜10万円前後に抑えられます。

自己負担の上限額(70歳以上の場合)

70歳以上の方は負担割合が1〜3割で、さらに所得に応じた上限額が設定されています。親の年収や資産状況によって区分が変わります。

高額療養費制度の70歳以上の自己負担上限額の図解

⚠️ 2026年8月の制度改正にご注意ください。
上の金額は2026年7月までの現行制度の自己負担上限額です。2026年8月からは、すべての所得区分で上限額が4〜7%程度引き上げられ、あわせて新たに「年間(8月〜翌7月)の上限額」が設けられます。さらに2027年8月からは所得区分が細分化される予定です。最新の正確な金額は、必ず厚生労働省の公式ページでご確認ください。

所得区分外来(個人)の上限入院を含む場合の上限
現役並みⅢ(年収約1,160万円〜)252,600円+α252,600円+α
現役並みⅡ(年収約770〜1,160万円)167,400円+α167,400円+α
現役並みⅠ(年収約370〜770万円)80,100円+α80,100円+α
一般(年収約156〜370万円程度)18,000円(年14.4万円が上限)57,600円
住民税非課税世帯Ⅱ8,000円24,600円
住民税非課税世帯Ⅰ(年金80万円以下等)8,000円15,000円

多くの高齢者は「一般」または「住民税非課税」に該当します。入院しても月6万円以下に収まるケースが大半です。

具体的にいくら節約できるか?計算例

「一般」所得区分の70代の親が入院したケースで計算してみましょう。

項目金額
入院・手術費用の総額100万円
保険適用後の窓口負担(3割)30万円
高額療養費制度の自己負担上限(一般区分)57,600円
高額療養費として払い戻される金額約242,400円
実質の自己負担額約57,600円

30万円の窓口負担が約5万7千円まで減る計算になります。この差額(約24万円)が数か月後に払い戻されます。

さらにお得になる「多数回該当」と「世帯合算」

多数回該当(連続して高額になる場合)

同一の健康保険に加入したまま、直近12か月間に3回以上高額療養費の支給を受けた場合、4回目からは上限額がさらに引き下がります。長期入院や治療が続く場合に活用できます。

所得区分通常の上限多数回該当後の上限
一般(70歳以上)57,600円44,400円

世帯合算

同じ健康保険に加入している家族(世帯)の医療費を合算することができます。たとえば、父と母がともに医療機関にかかっている場合、それぞれの自己負担を合算して上限額を超えた分を払い戻すことが可能です(70歳以上は自己負担が21,000円以上のものが対象)。

払い戻しを受けるには手続きが必要

高額療養費は自動的に戻ってくるわけではなく、申請が必要です。以下の手順で手続きを進めます。

  1. 加入している健康保険の窓口(国民健康保険の場合は市区町村)に問い合わせる
  2. 申請書類(医療費の領収書など)を提出する
  3. 通常、診療月から3か月後以降に申請可能
  4. 審査後2〜3か月で指定口座に振り込まれる

入院前に「限度額適用認定証」を取得しよう

後から払い戻しを受けるのではなく、事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、病院の窓口での支払い自体を上限額に抑えられます。高額な一時払いを避けられるため、特に入院が長くなりそうな場合に非常に有効です。

  • 申請先:加入している健康保険(国保は市区町村窓口)
  • 必要なもの:保険証・申請書(窓口またはオンラインで入手)
  • 発行まで:通常1〜2週間(急ぎの場合は窓口で相談)

💡 入院が決まったら、まず限度額適用認定証の申請を!

高額療養費制度でカバーされないものに注意

注意点として、以下は高額療養費の対象外です。これらは別途かかるため、入院が長引くと数十万円になることもあります。

  • 差額ベッド代:個室・少人数部屋の追加費用(1日5,000〜20,000円程度)
  • 食事代:1食490円(1日3食で1,470円)
  • 先進医療・自由診療の費用:保険外診療は全額自己負担
  • 交通費・日用品:入院生活に伴う生活費
  • 介護保険サービスの費用:医療費ではなく介護費として別制度

これらをカバーするために、民間の医療保険(入院給付金)を活用する方法があります。親が医療保険に加入している場合は、証書の場所と連絡先を事前に把握しておきましょう。

合わせて知りたい!似た制度との違い

制度名内容申請先
高額療養費制度1か月の医療費の自己負担上限を超えた分を払い戻し健康保険窓口
高額介護サービス費介護保険サービスの自己負担に上限を設ける市区町村
高額医療・高額介護合算制度医療費と介護費を合算して上限を設ける(年間)市区町村・健康保険
埋葬料・葬祭費死亡時に健康保険から支給される給付金健康保険窓口

医療費と介護費の両方がかかっている場合は、高額医療・高額介護合算制度を使うことでさらに負担を軽減できます。両方かかっている家庭はぜひ確認してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 親が後期高齢者医療保険に加入している場合も対象?

はい、対象です。75歳以上が加入する後期高齢者医療保険でも、高額療養費制度は適用されます。申請先は各都道府県の後期高齢者医療広域連合(手続きは市区町村窓口でも可)になります。

Q. 申請の期限はある?

高額療養費の申請には2年の時効があります。診療を受けた月の翌月1日から2年以内に申請しないと、払い戻しを受けられなくなります。入院後は忘れずに申請しましょう。

Q. 複数の病院にかかっている場合は合算できる?

70歳以上の場合、同じ月に複数の医療機関にかかった場合でも合算できます(ただし21,000円以上の自己負担分が対象)。申請時に複数の領収書をまとめて提出することで、より多くの払い戻しを受けられる場合があります。

まとめ:入院前に「限度額適用認定証」を準備しよう

  • 高額療養費制度で、月の医療費自己負担に上限が設けられる
  • 「一般」所得区分(70歳以上)の場合、入院時の上限は月57,600円
  • 「限度額適用認定証」を入院前に取得すると窓口払いを抑えられる
  • 差額ベッド代・食事代・先進医療は対象外なので注意
  • 介護費と合わせて使える「合算制度」も活用を検討する
  • 申請期限は2年以内。忘れずに手続きを

親が入院するかもしれない、という状況になったとき、この制度を知っているだけで「お金の不安」は大きく和らぎます。今のうちに制度の概要と手続き先を把握しておきましょう。

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