親の遺言をデジタルで残す時代へ|子世代が確認したいこと

「親に遺言を残してほしい」と思っても、財産や死後の話をいきなり切り出すのは難しいものです。さらに「スマホで遺言を作れるようになった」という情報を見ると、もう紙は不要なのか迷ってしまいます。

2026年10月現在、電子データを使う新しい遺言制度は成立・公布済みですが、まだ利用開始前です。スマホのメモだけで正式な遺言が完成するわけではありません。今使える制度と、これから始まる制度を分けて考えましょう。

最初に確認する3点

  • 新しい「保管証書遺言」は、成立済みでもまだ利用開始前
  • 現在は、自筆証書遺言・法務局保管・公正証書遺言を検討できる
  • スマホのメモと、法的な効力を持つ遺言は分けて考える
親の遺言をデジタルで残す前に紙の書類とスマートフォンを確認する水彩イラスト
デジタルの便利さだけで決めず、現行制度と利用開始前の新制度を分けて確認します。

2026年10月現在|デジタル遺言は「成立済み・未施行」

2026年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」が成立し、同月24日に公布されました。改正には、電子データなどで作成し、法務局で保管する保管証書遺言の創設が含まれています。

ただし、保管証書遺言の創設などシステム改修を要する部分は、公布日から3年を超えない範囲で政令が定める日に施行されます。具体的な開始日や細かな手続きは今後の案内を確認する必要があります。

「スマホだけで作成・送信して完了」ではありません

新制度では電子データの利用が想定されていますが、本人確認や法務局での手続き、遺言内容の口述など、法律上の要件があります。利用開始前の現時点では、スマホのメモや動画だけを新制度の正式な遺言として保管することはできません。

いま使える遺言の選択肢を先に知る

方法現在使えるか特徴と注意点
自筆証書遺言使える本文・日付・氏名は原則自書。添付する財産目録はパソコン作成や資料のコピーも可能ですが、各ページへの署名・押印などが必要です。
自筆証書遺言書保管制度使える作成した自筆証書遺言を法務局で保管。予約、本人出頭、本人確認、様式、手数料などの条件があります。
公正証書遺言使える公証人が関わり、証人2名の立会いなど所定の手続きで作成。原本は公証側で保管されます。
新しい保管証書遺言まだ使えない法律は成立・公布済み。電子データなどで作成し法務局で保管する制度ですが、利用開始日と詳細手続きは今後の案内待ちです。
2026年10月12日時点。制度の開始日や要件は変更される可能性があるため、作成時に公式情報を再確認してください。

現在の自筆証書遺言は「全部手書き」とは限らない

現行制度では、遺言本文・作成日付・氏名は原則として本人が自書し、押印します。一方、本文と別紙にする財産目録は、パソコンで作成したり、不動産の登記事項証明書や通帳のコピーを使ったりできます。

ただし、自書しない財産目録は、記載のある各ページへの署名・押印などが必要です。「パソコンで作ったから無効」「すべて入力でよい」と単純化せず、法務省の様式と注意事項を確認してください。

新しい保管証書遺言で変わる予定のこと

  • 電子データまたは書面で作成する新しい方式が加わる
  • 遺言者本人が作成したデータでなくても利用できる場合がある
  • 本人が法務局で、遺言の全文を口述するなどの確認を受ける
  • 電子データの場合は電子署名など、定められた措置が必要になる
  • 法務局で保管され、相続開始後の確認につなげる仕組みが整えられる

制度が便利になっても、本人の意思を確認する手続きがなくなるわけではありません。また、どのファイル形式や本人確認方法を使うかなどは、施行までに示される最新情報を確認する必要があります。

親と今日からできる5つの準備

1. 「遺言を書いて」ではなく、保管場所から聞く

最初から財産の分け方を尋ねると、監視されているように感じる人もいます。「通帳や保険証券は、入院したとき家族が見つけられる場所にある?」のように、困ったときの確認から始めます。

2. 財産の種類だけを一覧にする

金額を細かく聞き出す前に、預金、不動産、保険、有価証券、借入れなどの有無と、書類の保管場所を本人の同意のもとで整理します。口座暗証番号やパスワードは、家族共有の一覧へそのまま書かないでください。

3. スマホの希望メモと正式な遺言を分ける

葬儀、連絡してほしい人、写真や思い出の品などは、スマホのメモやエンディングノートに整理できます。一方、不動産や預金を誰へ相続させるかなど、法的な効力を持たせたい内容は正式な遺言の方式を確認します。

4. 今使える方法を比較する

自筆証書遺言、法務局の保管制度、公正証書遺言には、それぞれ手間・費用・保管方法が異なります。新制度を待つことが必ず最善とは限りません。本人の体調や家族関係、不動産の有無などに応じて検討します。

5. 複雑な家庭は、文章を書く前に相談する

再婚、前婚の子、相続人以外への遺贈、事業用財産、複数の不動産、家族間の対立などがある場合は、一般的なひな形だけで決めない方が安全です。公証役場や弁護士など、内容に合う相談先へ確認してください。

デジタルで残すときの安全確認

残してよい情報慎重に扱う情報
利用している金融機関や保険会社の名称暗証番号、ログインパスワード
重要書類や原本の保管場所マイナンバーや本人確認書類の画像
問い合わせ先、担当窓口クレジットカードのセキュリティコード
連絡してほしい人、葬儀や持ち物の希望本人の同意なく家族が複製した個人情報

「家族が困らないように」と機密情報を一か所へ集めると、紛失や不正利用の危険も大きくなります。何があるかを知らせる一覧と、実際の認証情報の保管方法を分けてください。デジタル資産全体は親のスマホとパスワードを確認する方法で整理できます。

まとめ|新制度を待つより、親の希望と書類の場所を確認する

電子データを使う保管証書遺言は、2026年6月に成立・公布されましたが、2026年10月現在は利用開始前です。「スマホだけで遺言が完成する」と急いで判断せず、施行日と正式な手続きを法務省で確認してください。

今日できるのは、親の重要書類の保管場所、財産の大まかな種類、連絡してほしい人、今の希望を一緒に整理することです。正式な遺言が必要な内容と、家族への希望メモを分けるだけでも、次の相談がしやすくなります。

よくある質問(FAQ)

Q. 2026年10月現在、スマホだけで正式な遺言を作れますか?

新しい保管証書遺言は成立・公布されていますが、システム改修を要する部分の施行日はまだ到来していません。現時点でスマホのメモや録音だけを、直ちに新制度の正式な遺言として法務局へ保管できるわけではありません。

Q. 新しい保管証書遺言は、いつ使えるようになりますか?

保管証書遺言の創設などは、2026年6月24日の公布日から3年を超えない範囲で、政令で定める日に施行されます。具体的な開始日や手続きは法務省の最新案内を確認してください。

Q. スマホのメモや動画は、遺言の代わりになりますか?

家族が本人の希望を理解する手掛かりにはなりますが、法律で定められた方式を満たす遺言と同じ効力があるとは限りません。財産の分け方など法的な効力を持たせたい内容は、公的情報や法律専門家へ確認してください。

Q. 現在の自筆証書遺言は、すべて手書きですか?

本文・日付・氏名は原則として本人の自書が必要ですが、添付する財産目録はパソコンで作成したり、登記事項証明書や通帳のコピーを使ったりできます。その場合も各ページへの署名・押印などの要件があります。

Q. 自筆証書遺言を法務局で保管してもらえますか?

現行の自筆証書遺言書保管制度を利用できます。予約や本人確認、様式、管轄、手数料などの条件があるため、作成前に法務省・法務局の案内を確認してください。法務局は遺言内容の法律相談には応じないため、内容に不安があれば専門家へ相談します。

Q. 親へ遺言の話をどう切り出せばいいですか?

いきなり財産の分け方を聞くより、重要書類の保管場所や、入院時に連絡してほしい人などから始めます。子ども自身も同じメモを作り、『一緒に確認したい』と伝えると、一方的に迫る形を避けやすくなります。

Q. パスワードを家族へ全部伝えた方がいいですか?

一括共有は不正利用や紛失の危険があります。利用中のサービス名、契約の有無、問い合わせ先、重要情報の保管場所までを本人の同意のもとで整理し、パスワードそのものは安全な方法で別管理してください。

参考にした公的情報

※本記事は2026年10月12日時点の公表情報をもとに、制度の概要を一般向けに整理したものです。個別の遺言内容や有効性を判断するものではありません。作成時は最新の公的情報を確認し、必要に応じて公証役場や法律専門家へ相談してください。