親の遺言がスマホで作れる?デジタル遺言制度で変わる終活の常識

「親に遺言書を書いてほしいけど、なかなか言い出せない」——そんなふうに思ったこと、ありませんか?

私自身も、そろそろ親の終活について真剣に考えなければと思いながら、「遺言書」という言葉の重さに、つい話を切り出せずにいました。公正証書遺言は費用がかかるし、自筆証書遺言は全文を手書きしなければならない。高齢の親に「遺言書を書いて」と頼むハードルは、想像以上に高いものです。

でも、そのハードルが大きく下がるかもしれない法改正が、まさに今年動き出しました。

2026年4月3日、政府は約25年ぶりとなる民法の大改正案を閣議決定しました。その目玉のひとつが「デジタル遺言」の創設です。パソコンやスマートフォンで遺言が作れる時代が、現実のものになろうとしています。

この記事では、デジタル遺言とは何か、私たち子世代にとってどんな意味があるのか、そして今から親とどう話を進めればいいのかを、わかりやすくお伝えします。


🗺 親の終活の全体像を知りたい方は 親の終活 完全ガイド【2026年版】 をどうぞ。お墓・葬儀・遺品整理・相続など7テーマを一望できます。

なぜ今、遺言の仕組みが変わるのか?——問題の本質

「遺言書がなかったばかりに、きょうだいで揉めた」という話は、決して他人事ではありません。

実は、家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割の争いの約75%は、遺産額が5,000万円以下のケースだと言われています。「うちは大した財産がないから大丈夫」と思っている家庭ほど、トラブルに巻き込まれやすいのが現実です。

相続で揉めるのは「お金持ちの家」ではなく、「準備をしていない家」です。

それなのに、遺言書の作成率は依然として低いまま。その最大の理由が、「作るのが面倒」「堅苦しい」という心理的・物理的なハードルです。自筆証書遺言は全文を手書きしなければならず、高齢で手が震える親にとっては大きな贠担。公正証書遺言は公証役場に出向き、証人2名が必要で、費用も数万円かかります。

今回の法改正は、まさにこの「作りにくさ」という根本的な問題に切り込むものなのです。


遺言書が作られない3つの原因

原因1:「全文手書き」という時代遅れのルール

現行の自筆証書遺言は、民法で「全文、日付及び氏名を自書」することが求められています。パソコンが当たり前の時代に、数ページにわたる文書を手書きで作成するのは、若い世代でも億劫です。ましてや、70代・80代の親にとっては身体的にも大きな負担になります。

「途中まで書いたけど、疲れてやめた」「字が読めないと無効になるかもしれないと思うと怖い」——こうした声は少なくありません。

原因2:「死」を連想させる心理的抵抗

遺言書という言葉には、どうしても「死の準傇」というイメージがつきまといます。親御さんの中には、「遺言書を書いてと言われると、早く死んでほしいのかと感じる」という方もいます。

「遺言を書いて」の一言が、親子の間に見えない壁を作ってしまうことがあるのです。

子世代としても、「縁起でもない」と怒られるのが怖くて、つい先延ばしにしてしまいがちです。

原因3:制度の複雑さと費用

公正証書遺言は確実ですが、公証役場への予約、証人の手配、数万円の費用がかかります。自筆証書遺言の法務局保管制度も2020年に始まりましたが、まだ知名度が低く、保管の手続き自体にも出向く必要があります。

「どの方法がいいのか分からない」「間違えたら無効になるかも」という不安が、行動を止めてしまうのです。


デジタル遺言で何が変わる?——解決の道筋

デジタル遺言制度のポイント

2026年4月に閣議決定された民法改正案に盛り込まれた「デジタル遺言」は、以下のような特徴を持っています。

まず、パソコンやスマートフォンで遺言書を作成できるようになります。手書きが不要になるため、高齢者や手が不自由な方でも遺言書を作りやすくなります。

次に、本人確認の仕組みが厳格に設計されています。全文を口述する録画や電子署名など、なりすましを防ぐ対策が盛り込まれる予定です。

さらに、法務局での保管を前提とした制度設計により、紛失や改ざんのリスクが軽減されます。

「スマホで遺言が作れる」という事実だけで、親との会話のきっかけが生まれるかもしれません。

同時に変わる成年後見制度

今回の改正では、成年後見制度も大きく変わります。これまでの「終身制」が廃止され、必要な期間だけ利用できる仕組みに改められます。また、後見・保佐・補助の3類型が「補助」に一元化され、本人の自己決定権がより尊重される方向へと進みます。

認知症の親を持つ方にとって、これは非常に重要な変化です。


今日からできる5つの具体アクション

親の遺言準備で今日からできる5つのアクションの図解

アクション1:まず「知る」ことから始める

法改正の施行時期はまだ先ですが、今から情報を集めておくことで、いざという時にスムーズに動けます。法務省のウェブサイトや、自治体の無料相続相談会などを活用しましょう。

アクション2:「ニュースの話題」として親に伝える

「遺言書を書いて」と直接言うのではなく、「最近ニュースで見たんだけど、スマホで遺言が作れるようになるらしいよ」と、あくまで話題として共有するのがポイントです。ニュースという第三者の視点を借りることで、親も構えずに聞いてくれます。

アクション3:親の不動産を確認する

2026年4月から住所等変更登記が義務化され、2年以内に登記しないと5万円以下の過料の対象になります。また、2026年2月からは「所有不動産記録証明制度」が始まり、法務局で親名義の不動産を全国一覧で確認できるようになりました。「登記の確認だけでもしておこうか」と声をかけるのも、自然な切り口です。

アクション4:エンディングノートから始める

遺言書はハードルが高くても、エンディングノートなら気軽に始められます。書店や100円ショップでも手に入ります。「私も自分の分を書いてみるから、一緒にやってみない?」と誘えば、親も抵抗なく取り組めるかもしれません。

「一緒にやろう」の一言が、親の背中を押す最大の力になります。

アクション5:専門家への相談窓口を把握しておく

いざ遺言書を作成する段階になったら、弁護士や司法書士、行政書士に相談するのが確実です。初回無料相談を実施している事務所も多いので、地域の専門家リストをあらかじめ作っておきましょう。自治体の法律相談会や、法テラス(0570-078374)も心強い味方です。


まとめ:「いつかやろう」を「今日、ちょっと調べてみる」に変える

デジタル遺言という新しい制度は、まだ成立前の段階です。すぐに使えるわけではありません。

でも、だからこそ「今のうちに」準備を始める価値があるのです。

法律が変わるのを待つ必要はありません。今日できることは、たくさんあります。ニュースの話題として親に伝えること。エンディングノートを一緒に書いてみること。不動産の登記を確認すること。

私自身も、この記事を書きながら改めて思いました。親が元気なうちに話せることは、実はとても恵まれていることなのだと。

「まだ早い」と思えるうちが、実は一番いいタイミングです。

親の終活は、親のためだけではありません。残される私たちが、後悔なく前を向いて生きていくためのものでもあります。

今日、ほんの少しだけ、一歩を踏み出してみませんか。

よくある質問(FAQ)

Q. デジタル遺言とは何ですか?

スマホやPC上で作成・保管できる電子遺言のこと。2025年以降、法改正で紙と同等の効力を持つ方式が整備されつつあります。

Q. スマホで遺言を作るメリットは?

①いつでも修正できる②保管場所に困らない③パスワードで他者に見られない、の3つが大きなメリットです。

Q. デジタル遺言の注意点は?

相続人がアクセス方法を知らないと意味がありません。エンディングノートに「アクセス方法」を書いて残しておくことが重要です。

📊 次のステップに進むなら

親の終活で具体的に動き出すなら、テーマ別の比較ガイドが役立ちます。